反撃の御言葉 -MIKOTO-

運命にあらがう人を鼓舞する名言集

『人生の逆境に立つ大人のための、言葉と教養のメディア』
A collection of inspiring quotes for those who resist from destiny.

「走ったって負けるけど、走らずに負けるよりましだ」イビチャ・オシムの名言が教える教訓

「どうせ無理だ」「今からやっても遅い」「頑張ったところで結果は変わらない」そう思って、動くことをやめてしまった経験はありませんか。人生には、努力しても勝てないことがあります。挑戦しても失敗することがあります。どれだけ願っても、思い通りにならない現実があります。

だからこそ、旧ユーゴスラビア代表や日本代表を率いたイビチャ・オシムが残した言葉、

「走ったって負けることはあるけど、走らずに負けるよりましだ」

には、単なる「頑張れ」という励ましとは違う強さがあります。オシムは、走れば必ず勝てるとは言っていません。むしろ、「走っても負ける」と認めている。それでも、「走らずに負けるよりいい」と言う。この言葉が伝えているのは、勝利の保証ではありません。

結果を自分だけでは決められなくても、自分がどう動くかは選べる。

そんな、厳しくも現実的な人生観なのです。

目次

  • 「走ったって負ける」の本当の意味
  • イビチャ・オシムとはどんな人物だったのか
  • 戦争と分断を生きたオシムの人生
  • 「考えて走る」サッカーとは何か
  • 2003年のジェフ市原戦で語られた言葉
  • なぜ「走る」は人生にも通じるのか
  • 心理学・脳科学から考える「まず動く」こと
  • 30代・40代・50代の人生に置き換える
  • MIKOTO編集部の考察
  • 今日からできる「小さな反撃」
  • まとめ|あなたの反撃は、ここから始まる

「走ったって負ける」の本当の意味

この言葉の核心は、後半の「走らずに負けるよりましだ」です。「走る」と聞くと、努力や根性を思い浮かべるかもしれません。しかしオシムのサッカーにおける「走る」は、ただ距離を稼ぐことではありません。

考える。判断する。必要な場所へ動く。その結果として「走る」のです。つまり人生に置き換えるなら、とにかく頑張れではありません。自分で考え、自分にできることを見つけ、それを実行しろという言葉です。そして、その行動が必ず成功につながるわけではない。それでも、

何もしなければ、何も変わらない。

ここにオシムの現実主義があります。


イビチャ・オシムとはどんな人物だったのか

イビチャ・オシムは1941年、サラエボ生まれ。選手としてユーゴスラビア代表などでプレーした後、指導者となり、ユーゴスラビア代表、パナシナイコス、シュトゥルム・グラーツなどを率いました。2003年にはジェフ市原の監督に就任し、2005年にクラブ初の主要タイトルとなるナビスコカップを獲得。2006年には日本代表監督に就任しました。2022年には日本サッカー殿堂入りを果たしています。

日本代表では2007年のアジアカップで4位となりましたが、同年11月に脳梗塞で倒れ、代表監督への復帰は叶いませんでした。その後も日本サッカーへの助言を続けました。


戦争と分断を生きたオシムの人生

オシムを「名言をたくさん残した名監督」とだけ見ると、この言葉の重さを見失います。彼の故郷サラエボは、1990年代のユーゴスラビア解体とボスニア紛争の中で戦火に包まれました。1990年イタリアW杯ではユーゴスラビアをベスト8へ導いたオシムでしたが、1992年、故郷で戦争が続く中、ユーゴスラビア代表監督を辞任します。

その後、オーストリアのシュトルム・グラーツを率い、新たな場所でチームを築いていきました。シュトルム・グラーツ公式史でも、1994年の就任以後、クラブの新しいプレースタイルを確立し、国内タイトルへ導いたことが記録されています。つまり彼の人生そのものが、失う→環境が変わる→それでも再び築くという経験を含んでいました。だからこそ、

「走ったって負ける」

という言葉には、結果を超えて行動する人間への理解が感じられるのです。


「考えて走る」サッカーとは何か

日本でオシムを象徴する言葉が、「考えて走る」です。オシムのサッカーでは、選手が状況を読み、判断し、それに応じて動くことが重視されました。JFAも、オシムが選手に「考えて、判断する」ことを求め、日本人の特徴を生かしたサッカーを目指したことを評価しています。

だから、オシムの「走る」は、無目的な努力ではありません。目的のある行動です。人生でも同じでしょう。一日10時間働く。毎日勉強する。寝る時間を削る。それだけで成功が保証されるわけではありません。大切なのは、

「自分はいま、何のために動いているのか」

を考えること。これこそ、オシムの「走る」を人生に置き換えたときの重要な意味だと思います。


2003年のジェフ市原戦で語られた言葉

どんな場面で出たのか?

この言葉には、非常に興味深い同時代資料があります。2003年4月26日、Jリーグ・ファーストステージ第5節。ジェフ市原は横浜F・マリノスに3-1で勝利しました。この試合を評したサッカーライターの湯浅健二氏は、試合後のオシム監督の発言として、走ったって負けることはあるけれど、走らずに負けるよりはまし」という趣旨の言葉を記録しています。これは重要な資料です。

なぜなら、単なる後年の「名言集」ではなく、実際の試合を分析した2003年当時の記事の中で紹介されているからです。


その試合から見える「走る」の正体

湯浅氏の試合評では、ジェフの攻守の切り替えや、ボールがない場所での動きなどが評価されています。オシムのチームは、守備では素早く戻り、攻撃では複数の選手が連動して前へ出る。つまり、

走る→攻撃する

だけではありません。失ったら戻る。奪ったら出る。仲間が動けば自分も動く。その判断の連続です。だから、この名言を「とにかく走れ」という根性論として紹介するのは、オシムの思想を半分しか理解していません。走る前に、考える。これがオシムです。


なぜ「走る」は人生にも通じるのか

人生では、結果を完全にコントロールすることはできません。転職しても採用されない。資格を受けても落ちる。努力しても評価されない。勇気を出して告白しても断られる。新しい仕事を始めても失敗する。だから人は、

「どうせ結果が変わらないなら、やらないほうがいい」

と考えてしまいます。しかし、そこで行動まで捨てれば、成功する可能性も、学ぶ可能性も、次の道を発見する可能性も消えてしまう。オシムの言葉は、そのことを教えているのではないでしょうか。負けないために走るのではない。可能性をゼロにしないために走る。これは非常に大きな違いです。


心理学・脳科学から考える「まず動く」

心理学には、アルバート・バンデューラが提唱した自己効力感(self-efficacy)という概念があります。これは「自分には、ある状況で必要な行動を実行できる」という認識です。人は、小さな達成経験を通じて「自分にもできる」という感覚を得ることがあります。

反対に、「何をしても変わらない」という経験が続くと、行動そのものを諦めやすくなる現象も研究されてきました。だから再起では、大勝利より先に、小さな行動を取り戻す意味があります。なお、運動についても興味深い研究があります。

2024年のメタ分析では、103研究・4,671人を対象に、1回の運動の後に一般的な気分が改善し、不安や抑うつ症状も平均的に低下することが示されました。ただし、研究間のばらつきは大きく、全員に同じ効果が保証されるわけではありません。つまり、「動けば人生が必ず変わる」ではありません。しかし、

動くことが、次に動くための心理的な足場になる可能性はある。

そこに「走る」ことの価値があります。


30代・40代・50代へ――「今さら遅い」と思ったときに

若い頃なら、「失敗してもまだやり直せる」と言われます。しかし30代、40代、50代になると、「もう遅い」という言葉が頭に浮かびます。仕事、家庭、収入、キャリア。守るものが増えるほど、失敗することが怖くなる。だからこそ、オシムの言葉を大人の人生へ置き換えたい。

若い頃のように無謀に走る必要はありません。

考える。自分の力量を知る。必要な場所を選ぶ。そして動く。これは「考えて走る」です。


MIKOTO編集部の考察|「走ったって負ける」を受け入れる強さ

私がこの言葉で最も好きなのは、「負けることもある」と最初から認めているところです。人生を励ます言葉の中には、「頑張れば必ず報われる」「諦めなければ夢は叶う」というものがあります。もちろん、それが力になることもあります。

しかし現実は、それほど単純ではありません。努力しても失敗する。正しいことをしても評価されない。一生懸命やっても、思い通りにならない。

それでも、「だから何もしない」ではなく、「それでも、自分にできることをする」と考える。私はそこに、オシムの言葉の強さがあると思います。


サッカーから学んだ「動くこと」の意味

私自身、サッカーの指導に携わる中で、自分の力量不足を感じる場面が何度もありました。思うように指導できない。選手に伝えたいことが伝わらない。自分より優れた指導者を見る。そんなとき、「自分には向いていないのではないか」と思ってしまうことがあります。

サッカーの現場で学んだのは、最初から完璧な指導者などいないということです。試してみる。失敗する。振り返る。修正する。もう一度試す。その繰り返しです。オシムの言う「走る」とは、まさにこの姿勢なのではないでしょうか。走った結果、転ぶことはある。でも、転んだことで分かることもあります。

その一方で、私が指導を始めたばかりのころの選手たちは結果が目に見えて現れず、彼らは試合中に具体的にどのようにプレーしたらいいのか理解できていないように私には見受けられました。私の指導力が不足していたことには間違いはありませんが、私の指導によってこの一つの大会のうちに劇的に技術や選手たちが劇的にチームの状況を変えられうようには感じられませんでした。そこで私は「前からどんどんボールに対してプレッシャーをかけて追いかけていけ」とだけ指示を行いました。

技術がなくても、具体的なボールのもらい方や運び方ついて理解していない段階であっても、ボールに向かって走ることは出来る。結果として相手からボールを奪い、シュートチャンスまで生まれるようになりました。そのような結果が生まれたのは、何もできないという現状よりも、一つでも明確にできることがあることが選手たちの希望となったからなのではないかと思います。

「結果が出るから動く」のではなく、「動かなければ次の可能性が生まれないから動く」

という考え方を、この言葉から受け取っています。


あなたへ|負けるかもしれない。それでも一歩だけ前へ

今、人生が止まっているように感じる人へ。仕事がうまくいかない。夢を諦めそうだ。周囲だけが前に進んでいる。何をしても無駄に思える。そんなとき、大きな勇気はいりません。今日を勝つ必要もありません。ただ、一歩だけ動いてください。求人を一件見る。本を一ページ読む。誰かに連絡する。5分歩く。紙に一つだけ目標を書く。それでいい。あなたが今必要としているのは、

人生を逆転させる奇跡ではなく、「まだ自分は動ける」と確認すること

なのかもしれません。


今日からできる「小さな反撃」|「10分だけ走る」を予定に組み込む

オシムの「考えて走る」を日常へ落とし込みます。おすすめは、「if-then形式」の行動計画です。「もし○○になったら、私は○○する」例えば、

「もし夜8時になったら、資格の勉強を10分だけする」

「もし転職への不安が出てきたら、求人を一件だけ見る」

「もし運動を面倒に感じたら、5分だけ歩く」

実行意図(implementation intentions)については、94の独立した研究をまとめたメタ分析で、目標達成への中~大程度の効果が報告されています。さらに「目標」と「障害」を先に考え、If-Then計画につなげるMCIIについても、21研究・15,907人を対象としたメタ分析で小~中程度の効果が示されています。ただし出版バイアスなどの限界もあります。

そして身体を動かすなら、無理のない範囲で10分歩く。ここで重要なのは、10分で人生を変えることではありません。「今日、自分の意思で走った」という記録を作ること。それが明日の一歩につながります。


まとめ|負けるかもしれない。それでも走る

イビチャ・オシムは、戦争と分断、成功と挫折、病を経験しながら、それでもサッカーと人生について考え続けた指導者でした。そんな彼の言葉として知られる、「走ったって負けることはあるけど、走らずに負けるよりマシだ」という言葉。私はこれを、「努力すれば必ず勝てる」とは読みません。むしろ、

「勝てる保証がなくても、自分にできることをやる」

という言葉だと思います。走る。でも考える。負ける。でも振り返る。また動く。その繰り返しの中で、少しずつ自分の人生を動かしていく。人生では、最後まで結果が分からないことがあります。だからこそ、今の敗北だけを見て、「もう終わりだ」と決める必要はありません。まだ走れる。まだ考えられる。まだ一歩を選べる。

その一歩が勝利につながるとは限らない。それでも、その一歩を踏み出した人にしか見えない景色があります。走ったって負けることはある。それでも、走らずに終わるより、ずっといい。今日、ほんの10分でもいい。自分の人生を、自分の足で動かしてみてください。

だから――あなたの反撃は、ここから始まります。

次回は、HONDAの創業者である本田本田宗一郎氏の経営哲学を元にしてCMにも使用された言葉について解説いたします。

「努力は報われない。それがどうした?」Honda「負けるもんか。」が教える、人生をもう一度立て直す力


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FAQ

Q1.「走ったって負けることはあるけど、走らずに負けるよりマシだ」は誰の言葉?

イビチャ・オシム氏の言葉として広く紹介されています。2003年のジェフ市原対横浜F・マリノス戦を扱った同時代の試合評にも、試合後の発言として記録があります。

Q2.オシムの「走る」は、単にたくさん走ることですか?

いいえ。オシムが重視したのは「考えて走る」サッカーです。状況を判断し、チームとして必要な場所へ動くことを含んでいます。

Q3.この言葉は「努力すれば必ず成功する」という意味ですか?

違います。「走っても負けることがある」と明言しているため、成功を保証する言葉ではありません。結果を完全には支配できなくても、自分にできる行動を選ぶことの価値を説く言葉として読むことができます。

Q4.仕事や人生にも使える言葉ですか?

使えます。ただし、無謀に努力し続けるという意味ではありません。自分の状況を考え、必要な行動を選び、結果を振り返って次の行動につなげるという意味で応用できます。

Q5.「何をしても無駄」と感じるとき、最初に何をすればいいですか?

大きな目標ではなく、5~10分で終わる行動を一つ決める方法があります。if-then形式の実行意図は、目標達成を促す方法として研究されています。

参考資料

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※本記事の肖像画は、既存の作品を模倣せず、AIによって独自に生成したオリジナルイメージです

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